電気工事士のお仕事5 幹線編

 前回の記事では、和田電気工事でよく見られる新築工事で電気工事をするときの主な作業について分電盤を紹介しました。今回は、幹線にスポットをあて、できるだけ専門用語を使わずわかりやすいよう、ある意味誤解を恐れずに、ちょっとだけ詳しく説明します。


幹線とは

 幹線とは、分電盤の主幹につながる電線で、電柱から建物に引き込まれた点から分電盤に至るまでの電線を指します。幹線は建物の電気設備の大元となるため、最も大きな電流が流れます。そのため、太い電線が使用されますが、なぜ太い電線が必要なのでしょうか


電気と水の比較

 電気を説明する際によく水に例えられます。たくさんの水を流すためには、配管を太くするか、水圧を上げる方法があります。

 これを電気に当てはめると、配管を太くすることは電線を太くすることに相当します。太い配管で多くの水が運べるのと同じように太い電線では多くの電気を運べるのです。

 もう一つの方法である水圧を上げることは、電気では電圧(V)を上げることに相当します。電圧を上げるためにはトランスと呼ばれる機械が必要です。トランスを含む変電設備は数百万円の費用がかかり、一般住宅でそこまでのコストをかける必要はありません。


工場の幹線

 一方、工場では大容量の電気が必要なため、幹線を太くするだけでは足りず、電圧を上げて送る必要があります。高い電圧で電柱から電気を引き込み、トランスを使って100V~200Vに変換して各機器に電気を送ります。このあたりの設備を高圧受電設備、変電設備と呼び、次回記事にする予定です。

 高い電圧にから100V~200Vに下げられた電圧を「低圧」 と呼び、下げられた電圧の幹線を「低圧幹線」と呼びます。


幹線の太さ

 幹線の太さですが、太いものでは直径6.6cm、1mで10kgあります。そんなサイズは滅多に使いませんが、直径6cm、1mで8kg程度のものはよく使われます。200mの幹線が必要だったとして、これを現場に運び入れるのも一苦労です。電線1本で約1.6tにもなります。これはトヨタのミニバン、ノア1台分に相当します。


幹線引き

 幹線はケーブルドラムと呼ばれる大きなボビンに巻かれた状態で運ばれ、これを伸ばす作業を「幹線引き」と呼びます。重労働であり、多くの人手が必要です。現場の様子にもよりますが、直径6cmの電線を200m引くには、10人ほどが必要です。


ケーブルウィンチ

 このしんどい作業を楽にする文明の利器がケーブルウィンチです。機能としてはロープを巻き取るだけの機械なのですが、ロープを幹線と結んでおくと巻き取る力で電線をブリブリと引っ張っていきます。素晴らしいですね。ただケーブルウィンチがうまく動作するようにセットするのもコツがいります。失敗すると途中でひっかかって止まってしまったり、機械をオーバーヒートさせて故障なんてこともあるのですが、うまくセットできればヒーローです。しんどい思いをせずに済んだ他の9人から称賛を浴びせられることでしょう。


電気工事士に向いている人

 若干オーバーな表現でしたが、ケーブルウィンチを制する者は幹線引きを制するのです。

 物の動きをなんとなく推測できる方、空間認知能力に自信のある方、ヒーローとして称賛を集めたい方、ぜひ電気工事士を目指してみませんか?


➤「電気工事士のお仕事6 高圧受電・変電設備編」はこちら